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  • 2016.10.11 Tuesday
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寄る年波には平泳ぎ/群ようこ著

「クツ」を「クソ」と読み間違えて自己嫌悪、「一つ買ったら三つ捨てる」の習慣で物減らしに挑戦、年をとり頑固になったネコを「できるだけ、がんばれ」と激励、ネットの罵詈雑言に憤然、エンディングノートの書き方に逡巡。……長く生きてると何かとあるけれど、控えめな気合いを入れて、淡々と暮らしていこう。人生の視界が広くなるエッセイ。

−Amazon商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)引用−

 

○○女子などと言って、自分の年齢に抗う女性が増えている昨今。

こうして清々しく自分の年齢を受け入れてしたためるあたりが、

強かというか、この作者の有り様なのだと納得の一冊。

 

バタバタと、できないバタフライで泳ぐより、

マイペースで平泳ぎしながら生きることの心地よさ。

そんな風に解釈をしました。

 

猫の集会にワクワクしたり、独り身の将来を考えてみたり。

実際、自分の身に置き換えることが出来る題材ばかりで、少し考えてしまう一面もあり。

膝の上の飼い猫に、こんな風に一緒に年を重ねていければいいねと呟きそうになります。

 

群さんのエッセイはどれもこんな風ではあるけれど、

この本はいつもよりちょっとだけ、テイストが違う気がしました。

どこが違うのか、うまく表現出来ないのだけれど、

鋭く浅く切るより、ちょっとだけ深く刺した感じかなぁ?

 

久しぶりに読んだ群さんのエッセイ、堪能出来たのは間違いないのですけれどもね。

 

 

 

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川あかり/葉室麟著

伊東七十郎は藩で一番の臆病者と噂される男である。
まだ若いが、性格はおとなしく、剣の腕ではからっきし。
そんな男が、密命を帯びて刺客として放たれた。
巨瀬川は、雨続きで渡れず、汐井宿の木賃宿で川明けをまつこととなった。
そこで出会う人々、起こる事件、藩の事情・・・さまざまな出来事を通じて変わっていこうとする七十郎。
果たして彼は川明けに、刺客としての責務を果たすことができるのでしょうか。

軽い、ほのぼのとした時代小説です。
タイトルや本のカバー、書かれたコピーで骨太の時代小説を想像してしまいそうですが、さにあらず。
人を斬ると言う重いテーマを抱えていたにも拘わらず、読後感もほのぼのとしています。
文章も軽快で読みやすい。
もう少し重くてもいいかなと思ったくらいです。
臆病者と言っても、人を斬った後もそれほど心に傷を負うこともなく過ごしているのが気になるほど。
そこがこの読後感を呼ぶのかもしれません。
エンターテーメント小説としては、面白いです。
最後まで成長できてない主人公の堅物さも、面白かったです。



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八日目の蝉/角田光代著

評価:
角田 光代
中央公論新社
¥ 637
(2011-01-22)

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃 亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。
第二回中央公論文芸賞受賞作。
−Amazon商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)引用−

不倫相手の子を一目見た時から、どうしてもその子が欲しくなってしまった希和子。
自分は不倫故に堕胎するしかなかった。
抱くことが出来なかった我が子と、目の前にいる正妻の子とがオーバーラップする。
彼女はその幼い娘を連れて、逃避行を始めます。

逃げて、逃げて、また逃げて。

本当に、自分の娘のように。
あるいはそれ以上に愛情を注いで、薫と名付けた娘を愛する希和子。
その姿は、母性愛の象徴のようです。

どうやって娘と幸せに生きていくのか。
逃げ切って欲しい。
そう思いながら、願いながら読みました。
しかし、やはり誘拐は犯罪なのです。
彼女は捕まり、薫は元の場所、元の名前
恵理菜に戻りました。
そして、その娘の中には、記憶の混乱が残ることになるのです。

本の後半は、恵理菜が自分を見つめ直す様が描写されています。
本当の母親ではなかったけれど心から深く愛してくれた希和子と、一番可愛い時期に引き離されたせいか、愛情を注いでくれない実母との間で心は揺れ、葛藤せざるを得なくなっているのです。

一番悪いのは、どんな理由があるにせよ、不倫した父親であることは明白なのですが。

引き込まれるように読みましたが、私としては希和子中心に最後まで書ききって欲しかったです。
絵理菜(薫)に主人公が移る後半、どうしてもスピードダウン、あるいはトーンダウンしてしまったからなのです。
これはこれで必要だったのだと思いますが、絵理菜より希和子の心の方が、私の胸を打ちました。

この本を読みながら、母性って何だろうって考えてしまいました。
血が繋がっているとか、お腹の中で育んだとか、そんな事実をすっ飛ばして、大きな母性愛溢れる希和子の存在が、犯罪を犯したとは言え、尊く眩く感じられるのです。


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吸涙鬼/市川拓司著

評価:
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満月の夜に忍び込んだ学校の屋上庭園で意識を失ってしまった美紗は、奇妙だが不思議な魅力を放つ転校生・冬馬に助けられた。翌日、美紗は彼の住む家を訪れ て不治の病いを打ち明ける。一生に一度だけの恋を冬馬に抱く美紗。しかし、冬馬は誰にも明かせぬ秘密の存在―涙を吸って生きる吸涙鬼の一族だった。
−Amazon商品紹介(「BOOK」データベースより)引用−

う〜ん・・・。
ちょっと予想と違ったなぁと言うのが感想。
「鬼」と付いているからには、何か恐ろしい生き物とか業とか生態とかあるかなと思ったのですが、そんなのは一切無し。
淡い恋心が綴られたお話しなのだなと言う感じです。

結末も、私には消化不良気味でした。
違うタイプを選んでくれていれば、まだ救われた気がします。

もっとこう、ディープな部分まで掘り下げるような、そんなストーリーを期待していただけに、肩すかしを食らったような気分です。
期待したのが間違っていたのかな?
実際、彼たちの芯の部分や闇の部分、一族のことなどは、微妙に暈かされて描写されていますし。
直接的な描写を推奨する訳ではありませんが、物語の核心なので、もう少し具体的に描いて欲しかったと思います。
だからなのか、物語が上滑りしていて、二人の感情がうまく填っていない気がするんですよね。
なんとなく、ではなく、身を預けるだけの鋭い何かがあればよかったのに。

優しい、センチメンタルな恋物語が好きな方には、お薦めの小説です。
私には向かなかったかな?(^_^;)


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刀語 第十二話 炎刀・銃/西尾維新著

虚刀流・鑢七花と奇策士・とがめによる伝説の完成形変体刀蒐集の旅は、否定姫の腹心・左右田右衛門左衛門の所有する最後の一本―炎刀『銃』を前に、最期にして最悪の試練を迎えていた―。容赦なく、迷いのない“弾丸”に貫かれたとがめを、七花は果たして救うことができるのか―!?西尾維新と竹が描く、時代活劇絵巻。とある歴史の物語―これにて終幕。刀語、第十二話の対戦相手は、否定姫腹心にして元忍者、左右田右衛門左衛門。

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。


「刀語」最終巻。
※ネタバレ注意。

これまで散々出てきた「炎刀・銃」(えんとう・じゅう)ですが、ここでようやくタイトルになります。
その銃口は前巻奇策士とがめに火を噴き、右衛門左衛門は急所を外して即死させず、「散り際の一言」「最期の一言」を聞けと言い放ち去っていきます。
そして雪山でもあった「ちぇりお」のくだりのリピート。
長い、長いとがめの独白。
散り際の一言は、何度読んでも泣ける。

「酷い、何の救いようもないような、死んで当然の女だけれど――それでも」
「わたしはそなたに、惚れてもいいか?」

これまで散々七花に「惚れてもよいぞ」と言ってきたとがめが、「惚れてもいいか?」ですよ!?
泣くしかないわー・・・。
ないわー・・・。
ないわー・・・(エコー)。

ちなみにアニメ版では号泣しました。
CV田村ゆかりGJ。
この回、この巻、このセリフがあったればこそ、刀語が好きになったと言っても過言ではないです。
そして、小説まで読もうという気になった。

後は尾張城での七花無双。
とがめの着物を着て城攻めを行い、その着物にくるまって休む姿にまた涙。
まるで母を慕う子供のよう。
「でも、右衛門左衛門。仕方ねえんだよ。」
「おれはそういうとがめのことを好きになっちゃったんだから」
ここで更に涙。
この着物がまた、七花の命を守るフラグに追い涙。

左右田右衛門左衛門の最期もまた壮絶。
でも、ラストは何だかもにょる。
何であのラストかなぁ。
「ちぇりおーっっっ!」
まではいいとして。
否定姫と一緒ですか。。。(´・ω・`)

でも。
まぁ、仮面を付けていることに免じて。
「『とがめがおれを守ってくれたんだ』って、格好付けて、そういう風に決めつけちゃうべきなのよ」
の一言で赦そうかな?(上から目線w)

結局歴史は変わらなかったし、辛い凄絶な人生を歩まされて、壮絶な最期を迎えなければならなかったとがめの一生って、何だったんでしょうね。
生きていれば。
生きてさえいれば、また違った人生もあったでしょうに。
それはとがめ自身が否定していますが、でも、どちらにせよあそこで斃れなければ尾張城攻略はあったでしょうし、成功しても失敗しても、生きていれば結果とがめは七花を殺すことは出来ずに、一緒にいることが出来る未来もあったのではないかと。
そんな風に思ってしまうのです。

それにしても。
この物語は好きです。
人が死んで涙を誘ったり、感情移入出来たり、そんな物語はどうだかという風潮もありますが、それでも私はこの巻で大泣きしてしまったので、これはこれで感動出来た作品だなと思うのです。
大体この結末は予定調和であったでしょうし。
とがめの幸せな人生も、見てみたかったなと、勝手に考えてしまうのは、一番好きなキャラクターだからでしょう。

あ。
最後。
七花の回想で「長月――とがめと口を吸いあった」とあるのですが、あれは一方的なのではなかったのか!?
と疑惑がふつふつ湧いてます。
「吸われた」でも「吸った」でもなく、「吸いあった」ですよwww(///o///)
第九話ラストの「おねだり」が有ったんだろうか(笑)

久し振りの小説一気読みで、楽しかったです。
また、いい作品に出会いたいですね。

その前に、もう一度読み返そうっと♪


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刀語 第十一話 毒刀・鍍/西尾維新著

伝説の刀蒐集完了まで残りあと二本!!毒刀『鍍』を手にした真庭鳳凰は触れるもの全てを斬殺する殺意の化身と化し、真庭忍軍の本拠地“新・真庭の里”に向かう。虚刀流・鑢七花と奇策士・とがめも、鳳凰と刀を追い、伊賀の山中へ!血塗れた里にひとり佇む鳳凰から告げられる、“乱世”を貫く壮大な秘密とは―!?悲劇の“終局”まで待ったなし!刀語、第十一話の対戦相手は、真庭忍軍十二頭領がひとり、真庭鳳凰!。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。

前回より引き続き。
※ネタバレ注意。

真庭鳳凰を助けてと言って気絶した、真庭人鳥(ぺんぎん)。
鳳凰は左右田右衛門左衛門との戦いの最中手にした「毒刀・鍍」(どくとう・めっき)により、稀代の刀鍛冶四季崎記紀の意識に憑依され、右衛門左衛門と人鳥を斬って姿を消した。
敵である奇策士とがめと虚刀流七代目当主鑢七花に助けを求めた、幼い人鳥。
しかしそれも憑依された鳳凰に指示されたものであった。
手厚く手当をした後、鳳凰を追って伊賀へと旅立つ二人。
そして明かされる、「虚刀・鑢」の正体。

ほんっと、右衛門左衛門はヒール(悪役)だわー。
そして真庭鳳凰。
彼もまた、ヒール。
でも、登場人物の中では一番可哀相な最期だと私は思う。
いきなり真っ二つにされた白鷺より、可哀相。
だって自分の意識が乗っ取られたままの最期だもの。
きっと死んだことすら知らないうちに終わったんだよね。

アニメ版では人鳥と右衛門左衛門との対決が怖かった。
人鳥の恐怖がそのまま伝わってくるような、そんんな回。
まぁでも右衛門左衛門の過去が分かってしまうと、そこまでする意味も分かるような。

この間のラストからはもう最終巻まで一気です。
反逆者飛騨鷹比等の一人娘、容赦姫であると知った右衛門左衛門が、とがめに「炎刀・銃」を向ける。
さて、とがめの命運やいかに?
そんな終わり方ですが、やはりここでも「炎刀・銃」が登場します。
むしろ、これまでの伏線は、このための布石と言ってもいいんじゃないかな。

ダークでヘビーな巻ですが、それだけに読み応えはこれまでの巻よりあると思います。
全巻でこれをやられると辟易しますが、クライマックスでこれなら、いいんじゃないかな。
私はアニメ版を全部観てから小説を読んでいるので、結末は当然知っているのですが、やっぱり切ないですね。
七花が純粋なだけに、特にそう思ってしまいます。



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刀語 第十話 誠刀・銓/西尾維新著

虚刀流・鑢七花と奇策士・とがめが蒐集する変体刀は、いよいよ十本目。対象は誠刀『銓』、所在は陸奥の百刑場。そこは、先の大乱を導いたとがめの父・飛騨鷹比等が、七花の父・鑢六枝に斬殺されたという呪われた土地だった。いまは何もない原っぱ―百刑場に突如出現した“仙人”は、とがめの心をかき乱し、七花に“意識”の戦いを強いる!刀語、第十話の対戦相手は、変幻自在の彼我木輪廻。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。

戻ってこなかった、忌まわしい思い出しかない故郷。
そこに「誠刀・銓」(せいとう・はかり)があるとの情報を得て、奇策士とがめはこの地に立った。
対するは、相手の記憶から姿を借りると言う仙人・彼我木輪廻。
仙人の出す条件を呑み、一人で「誠刀・銓」の発掘作業に取り組む奇策士とがめ。
仙人と問答をするうちに、様々な内的世界を見せられる、虚刀流七代目当主鑢七花。
それぞれが、それぞれの想いや思惑を取り込み吐き出しながら進むこの巻では、完了形変体刀・虚刀「鑢」にまで進んでいきます。
結果、とがめは自分の苦手意識であった父親への意識が和らぐことになります。

まぁね。
とがめの過去は凄惨だから、どうしても意識的に忘れたかったりするだろうし、元々苦手だった人物との記憶は、そしてそれがどうしようもない記憶だとすれば、無意識に消去してしまうのも理解出来ます。

不思議ですね。
物語上、ほぼ出てこないとがめの方がヒロインになっていて、出ずっぱりに近い七花の印象が少ない。
つまりは、そう言った位置づけの巻だったのかなと思います。

ラスト、真庭人鳥の「助けてください」が、急転直下、波瀾万丈、怒濤の結末へと誘いますが、それは次巻のお楽しみと言うことで。
・・・人鳥、可愛いよね(笑)

それにしても。
否定姫の挙動が不気味です。
勘が良い。
とがめの過去が、尾張幕府家鳴将軍家直轄内部監察所総監督・否定姫に曝かれそうです。
知られてはならない相手に、その一番重要な部分が知られてしまう恐怖。
物語が佳境へと差し掛かっていくのがピリピリと伝わってきますね。



 
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刀語 第九話 王刀・鋸/西尾維新著

出羽は天童将棋村―。無刀の剣士・鑢七花と奇策士・とがめは、王刀『鋸』を振るい、心王一鞘流をたった一人で守る汽口慚愧の道場を訪ねる。とがめがめぐらした奇策に、全身全霊で攻め入る汽口!一方で、否定姫配下の元忍者・左右田右衛門左衛門による真庭忍軍への残忍な粛清は静かに続く―!刀語、第九話の対戦相手は、心王一鞘流当主、汽口慚愧。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。

今後の修羅的展開が始まる前の清涼飲料水的な巻。
汽口慚愧のくそ真面目な性格と融通の利かなさは、まるでモデルが居るような感じです(笑)
たまにいますよね、こういう人。

アニメ版では、それはもう爆笑してしまうくらい奇策士とがめのジェラジェラ度が高い回なのですが(実際それしか印象に残ってない)、小説はそうでもない。
むしろ、七花も作中で言っている通り、ようやくまともな蒐集が行われる巻です。

ただの木刀でありながら、持つ者の意識を変えさせる「王刀・鋸」(おうとう・のこぎり)。
汽口慚愧が所持することで、その刀の特性は割り増しされたような印象です。
この刀をいかに手に入れるか。
とがめの奇策が、本領を発揮します。

一方まにわにの方も、「毒刀・鍍」の蒐集に成功してしまいます。
が、この回のヒロインは汽口慚愧ではなく、真庭鴛鴦でしょう。
彼女の最期は儚くも切ない一人の女性。
真庭忍軍の中では好きな方の人物です。
左右田右衛門左衛門、卑怯なりw
ヒールの役割全うしていますねぇ。

ラブラブ最高潮のシーンもありますし、将棋を指すシーンも棋譜など細かくはないものの楽しかったです。
将棋が分からない人でも、そう言うものかなと理解出来る程度の説明はありますし。

この先物語は核心部分へと入り、クライマックスへと流れていくので、この巻で一休みと言ったところでしょうか。


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刀語 第八話 微刀・釵/西尾維新著

姉・七実との死闘を経て、名実共に日本最強となった七花と、伝説の変体刀を七本まで蒐集した奇策士・とがめは江戸の奥地に広がる人外魔境の異界・不要湖へと足を踏み入れる。“敵”か、“味方”か!?―とがめたちを揺さぶる監察所総監督・否定姫と、配下の元忍者・左右田右衛門左衛門!そして、残すところ四人!真庭忍軍の次の一手とは―!?刀語は後半戦に突入!目まぐるしく動く因縁の物語!刀語、第八話の対戦相手は、不要湖を守護する日和号。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。

壱級災害指定地域、江戸の不要湖にあるとされる「微刀・釵」(びとう・かんざし)。
「悪刀・鐚」(あくとう・びた)を手に入れた、尾張幕府直轄預奉所軍所総監督・奇策士とがめと、虚刀流七代目当主鑢七花は四季崎記紀完成形変体刀「微刀・釵」を探しに訪れた。
しかし「微刀・釵」は、恐るべき殺傷能力を持つからくり人形日和号(びよりごう)そのものであったため、いかに壊さず生け捕る(?)かに腐心するのであった。

冒頭から否定姫直轄の部下である左右田右衛門左衛門らしい人物のモノローグから始まり、その後も右衛門左衛門は道案内として登場します。
右衛門左衛門、嫌いじゃないんだけど。
むしろ好きなんだけど、ラストを知っているだけに、もにょる。
アニメ版は好きだったんだけど、小説版はあんまり・・・って感じかなぁ。

この巻は、奇策士とがめの能力がいかんなく発揮されている回だと思います。
方向感覚が優れているとか、絵を描くのが得意で構造観察能力にも長けているとか。
このお陰で今まで旅をしてきて問題がなかっただとか、今後もこの恩恵が随所に見られるとかがありますが、地図を作る旅の話は凄く切ない。
読み返すと泣けてくる。

ちなみに日和号、アニメ版では空を見上げてひなたぼっこする様が、ラピュタのロボット兵を思い出させます。
ロボットや機械や人形に、そんな感情など有るはずもないのですが、有ると思ってしまう。
リリカルな表現が絵的に行われると、人って様々な想像を働かせてしまうものですよね。

この巻ではもとかせめのセリフにとても共感したので、記しておこうと思います。
「運命は自分で切り開くもの、か?」
と七花が発した問いに、
「違うな」
「運命は自分で言い張るもの、だ」
と返すとがめ。
『自分の成功を運命だと言い張れば嫌味がないし、自分の失敗を運命だと言い張れば悔しくもなかろう。』
何だか哲学的です。
様々な場面を切り抜けてきたとがめならではのセリフでしょう。
余談ですが、どこかで読んだ話では、「運命」を「定め」と読んだ(言った)時からそれは確定してしまうので、悪いことは「定め」って言わない方がいいとありました。
「運命」って言った方が、悪い場面でも切り開いたり乗り切れたり出来そうな気はしますよね。

右衛門左衛門大活躍のこの回。
どろどろと深い場所まで話が見え始めたこの巻、不法投棄された物で埋め尽くされた不要湖を象徴するようです。
そしてまた出てくるキーワード「炎刀・銃」。
物語はラストに向けて加速していくばかりです。

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刀語 第七話 悪刀・鐚/西尾維新著

奇策士とがめと旅を続ける無刀の剣士・鑢七花を襲う、最大・最恐・最悪の試練―。刀大仏が鎮座する聖地・清涼院護剣寺で、この世で唯一血を分けた姉との、血で血を洗う死闘!悪刀『鐚』を携え、七花の前に立ちはだかる姉に、七花はその剣を振り下ろせるのか―!?刀語、第七話の対戦相手は、虚刀流不世出の天才・鑢七実。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−

西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。

伝説の刀鍛冶四季崎記紀作完成形変体刀十二本のうちの一つ、「悪刀・鐚」(あくとう・びた)。
現在所持するのは、踊山の凍空一族をこなゆきを残して殲滅させ、更に死霊山を守る神衛隊を全滅させて、その刀を手に入れた恐るべき天才、鑢七実。
弟であり、虚刀流七代目当主鑢七花を、土佐の護剣寺で待ち受ける。

姉弟対決。
非常な展開であり、七花の超えなければならない大きな壁の存在。
まぁこの姉、普通ではないので、どう足掻いたところでまともに対決すると負けます。
実際これまで勝てたことがないようですし。

この姉の存在が、七花にとって、大きな意味を持つことは明白で、それは物語の展開上でも、七花の内面的にも最後まで尾を引くこととなるのです。

生命を強制的に活性化させる「悪刀・鐚」。
まるで病弱な七実の為にあるような刀の「悪刀・鐚」ですが、それも七実にとっては自分をこの世につなぎ止めるための物でし かない。
殺されたかった。
死にたかった。
出来れば、病気ではなく最愛の弟の手で殺して欲しかった。
そんな願いを込めて「悪刀・鐚」を奪ったのであれば、悲しすぎますよね。

人間性の芽生えた七花にとって、最愛の姉を手にかけなければならないジレンマ。
野望実現のために何としても「悪刀・鐚」を手に入れなければならない奇策士とがめ。
それぞれの想いがよく表れている巻です、
この巻があるからこそ、今後の物語が生きてくる。
でもやはり、切ないなーと思ってしまいます。

この巻から、登場人物の内面まで踏み込むことが多くなってきます。
故に、十一巻が生きてくるのですが、それはそれでまた切ないんですよね。

せめてもの救いは、七実が満足して逝ったことでしょうか?

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