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”文学少女”と飢え渇く幽霊/野村美月著
- 2007.05.05 Saturday
- 野村美月
- 21:16
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- by mako
そして一級下で過去、「謎の天才美少女作家」であった経歴をひた隠しに生きる少年、井上心葉。
いつものように、いつもの如く文学部の部室では、
部長の遠子先輩が、心葉に「三題噺」を書かせていた。
話の出来(味)に不満(激辛!)の遠子先輩。
不法設置の「恋愛相談ポスト」を物色(甘い物探し)に行く。
しかし、そこに投函されていたのは、小さな破り取られた紙片に書かれた呪わしい言葉と、意味不明の数字・・・。
その謎を突きとめていくうちに出逢った一人の少女。
自分を「死人」と言う、夏夜乃と名乗る少女。
そして、その少女にそっくりの、蛍と言う在校生。
夜毎に現れる、死人を名乗る夏夜乃と邂逅する心葉。
少女にまつわる謎と、手紙の謎。
二人は意図せぬままに、複雑な物語へと足を踏み入れていくのでした。
ふむ。
レモンを二つに割って、お砂糖たっぷりのオレンジキュラソーでソテーしたような、切なく、すっぱい物語です。
前作に比べても、描写力が上がっているのと、構成がしっかりしているのとで、気が付いたら心葉より、蛍寄りに引き込まれていきます。
エミリー・ブロンテの「嵐が丘」を題材にして、切なすぎるほど哀しい物語が展開していくのです。
前作の太宰治モチーフは、私の苦手とするところであったので、少し途惑ってしまった感は否めませんが、本作の「嵐が丘」となれば話は別で。
私はこの物語を、小学生から何度も読み返している(笑)
だから、物語が進んで「嵐が丘」の題が出たときから、物語の哀しさは読めてしまったのですが。。。
クライマックスの遠子の謎解き(?)や、蛍の想いもさることながら。
エピローグの、蛍から流人に宛てたメッセージに泣けてしまいました。
まだまだ心葉のトラウマは消えないし、問題を抱えた登場人物が更に増えた感はありますが、狂おしいほど切なく甘酸っぱい、いい物語になっています。
途中、青春小説のような爽やかな甘苦さもあります。
次巻を読むのが楽しみになりました。
“文学少女”と死にたがりの道化/野村美月著
- 2007.03.24 Saturday
- 野村美月
- 18:04
- comments(2)
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- by mako
「彼」は今日も文芸部の先輩であり、物語を食べる妖怪、天野遠子のおやつである物語を綴っている。
「甘い味のする物語」を切望する遠子は、恋愛相談ポストを(無断)設置し、恋愛相談に乗る代わりに、成就したら甘いレポートを提出強要する策に出た!
ラブレターの代筆を押しつけられ苦悩する心葉。
そんなことは気にも留めずに煽る遠子。
依頼をしてきた千愛が語る、幸せな想い。
しかし、その相手である「愁二先輩」は在校生に存在しないことが発覚したところから、物語に暗雲が立ちこめていくのであった・・・・・・。
まず、設定がありきたりのような、そうでないような。
微妙なバランスの上に成り立っています。
物語は、文芸評論のような、ミステリのような味わい。
天野遠子調で語るなら、
「奇抜と思えるような天然の果汁を幾種類も絞って組み合わせたソースを、文芸評論と恋愛とちょっと切ない青春のわだかまりを重ねて作った、僅かに苦い爽やかな甘さのミルフィーユのような物語」
と言ったトコロでしょうか。
ただしコメディと思ったら間違いで、案外シュールな物語。
人間心理の深いところまで覗き込んだり、Sは誰だ?、道化は誰だ?と言ったような、推理要素も入っています。
特筆すべきは、天野遠子が語る物語の味批評(笑)
普通の食べ物に味を感じない彼女が、物語を本当に(ページを破って)食べてしまう姿は微笑ましくもあります。
この巻では、彼女の太宰治評が結構イケている(笑)ので、太宰治入門にはうってつけかもしれません。
まだまだ、謎が多く、心葉のトラウマや遠子の食の謎などが解明されていませんが、一話完結でありながらも続く物語なので、続巻に期待!です。
☆を3つ付けましたが、3.5ぐらい行ってもいいかと言う出来です。
ライトノベル、侮れません(*^-^*)
物語を食べてしまう遠子の気持ち、微妙に理解できてしまう私は変でしょうか?
絵も大変綺麗ですので、是非一度ご覧下さい。
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