姉・七実との死闘を経て、名実共に日本最強となった七花と、伝説の変体刀を七本まで蒐集した奇策士・とがめは江戸の奥地に広がる人外魔境の異界・不要湖へと足を踏み入れる。“敵”か、“味方”か!?―とがめたちを揺さぶる監察所総監督・否定姫と、配下の元忍者・左右田右衛門左衛門!そして、残すところ四人!真庭忍軍の次の一手とは―!?刀語は後半戦に突入!目まぐるしく動く因縁の物語!刀語、第八話の対戦相手は、不要湖を守護する日和号。
−Amazonの商品紹介ページ(「BOOK」データベースより)抜粋−
西尾維新初の時代活劇。
先にアニメは全話見ているので、原作がどんなものかと興味を持ってシリーズを読み始めました。
壱級災害指定地域、江戸の不要湖にあるとされる「微刀・釵」(びとう・かんざし)。
「悪刀・鐚」(あくとう・びた)を手に入れた、尾張幕府直轄預奉所軍所総監督・奇策士とがめと、虚刀流七代目当主鑢七花は四季崎記紀完成形変体刀「微刀・釵」を探しに訪れた。
しかし「微刀・釵」は、恐るべき殺傷能力を持つからくり人形日和号(びよりごう)そのものであったため、いかに壊さず生け捕る(?)かに腐心するのであった。
冒頭から否定姫直轄の部下である左右田右衛門左衛門らしい人物のモノローグから始まり、その後も右衛門左衛門は道案内として登場します。
右衛門左衛門、嫌いじゃないんだけど。
むしろ好きなんだけど、ラストを知っているだけに、もにょる。
アニメ版は好きだったんだけど、小説版はあんまり・・・って感じかなぁ。
この巻は、奇策士とがめの能力がいかんなく発揮されている回だと思います。
方向感覚が優れているとか、絵を描くのが得意で構造観察能力にも長けているとか。
このお陰で今まで旅をしてきて問題がなかっただとか、今後もこの恩恵が随所に見られるとかがありますが、地図を作る旅の話は凄く切ない。
読み返すと泣けてくる。
ちなみに日和号、アニメ版では空を見上げてひなたぼっこする様が、ラピュタのロボット兵を思い出させます。
ロボットや機械や人形に、そんな感情など有るはずもないのですが、有ると思ってしまう。
リリカルな表現が絵的に行われると、人って様々な想像を働かせてしまうものですよね。
この巻ではもとかせめのセリフにとても共感したので、記しておこうと思います。
「運命は自分で切り開くもの、か?」
と七花が発した問いに、
「違うな」
「運命は自分で言い張るもの、だ」
と返すとがめ。
『自分の成功を運命だと言い張れば嫌味がないし、自分の失敗を運命だと言い張れば悔しくもなかろう。』
何だか哲学的です。
様々な場面を切り抜けてきたとがめならではのセリフでしょう。
余談ですが、どこかで読んだ話では、「運命」を「定め」と読んだ(言った)時からそれは確定してしまうので、悪いことは「定め」って言わない方がいいとありました。
「運命」って言った方が、悪い場面でも切り開いたり乗り切れたり出来そうな気はしますよね。
右衛門左衛門大活躍のこの回。
どろどろと深い場所まで話が見え始めたこの巻、不法投棄された物で埋め尽くされた不要湖を象徴するようです。
そしてまた出てくるキーワード「炎刀・銃」。
物語はラストに向けて加速していくばかりです。
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