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  • 2016.10.11 Tuesday
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悪魔に魅入られた本の城/オリヴィエーロ ディリベルト著, 望月 紀子訳

 テオドール・モムゼンの膨大な蔵書。
本達の辿った数奇な運命をノンフィクションで綴る。


この本は、前半を読めばいい本です。
後半は、柱脚と日本人のエッセイと、訳者のあとがきで埋められていますので、内容は半分しかないと言っても過言ではありません。
もう少し何とかならなかったのでしょうか。
その前半も、訳のせいか大変読みにくく、日本語として成立していない部分がある。
これではせっかく内容に興味があっても興醒めですね。

もっと本も様々な動きをしているのかと思ったのですが、持ち主の過失による火事が二回と戦火に遭うのが一回。
あとは微々たる移動で、特筆すべき数奇な運命はない。
むしろ、モムゼンの蔵書がどれだけ素晴らしく、どれだけの価値があったのかを噛み砕いて説明するべきでした。
原作がこうなら仕方がないのですが、とにかく柱脚と−−で囲まれた部分が多いのに辟易とする。
これは訳した側で何とかして欲しかった。
悪い題材ではないと思うので、残念としか言いようがないですね。

ノーベル賞を取る程の学者、テオドール・モムゼン。
彼についてもう少し別の本で詳しく知りたいとは思いました。


JUGEMテーマ:読書







葉桜/橋本紡著

評価:
橋本 紡
集英社
¥ 1,404
(2011-08-26)

 子供の頃から通う書道教室の先生に密かな恋心を抱いている少女。
長い長い、秘めた恋。
淡々と、書を習い、見てもらう日々。
夭逝するかもしれないと言われている妹。
先生の美しい妻。
先生が与った少年。
実力と相反する環境にいる先生。
多感な日常を切り取った、瑞々しい日々の物語。


筆致が大変美しい作品。
純文学と言ってもいい。
何か事件が起こっている訳でもないのに、読ませてしまう力がある。
この作者は大化けしたものだと、つくづく思う。
猫目狩りを読んだ時は想像だにしなかった。
その片鱗はあったけれども。

主人公が、悶々とし、行動に起こせない様。
どんどん開放的になっていく妹を、止めることもしない、出来ない。
妹の内面。
祖父の言葉。
先生の闇、夫妻の仲むつまじさ。
ある日突然、教室に通い出した同い年の少年。
予感した告白。
そして、自分の決意。
そこまでが、ゆるやかで美しく綴られていく。
先生と最後のやりとりは、言葉にならない程鮮やか。
このシーンのために、他の言葉が紡がれているのだと納得する。

本作は、何か大きな出来事がある物語ではない。
何かに決着が付くと言うこともない。
それでも、いい作品だと思う。
この季節、読書をしたい学生さんにもお勧めです。
今がちょうどいい季節だと思います。

 
JUGEMテーマ:読書

 

らん/秦建日子著

評価:
秦 建日子
PHP研究所
¥ 1,470
(2011-04-29)

干ばつに見舞われ、飢饉目前の一の村。
村の様子を余所に、大殿様は年貢を引き上げるとおふれを出した。
村の占いおばばが予言する。
「村を救うには、日の届かぬ深い闇の底に咲く赤い花を探し、持ち帰り、誰かがその毒にあたらねばならない」と。
使命を帯びた正太郎が探してきたのは、胸に赤い花の痣を持つらんと言う娘だった・・・。


これは、とても切ない恋物語です。
誰も、救われることがない。
正太郎の幼なじみであるお綾には村長の息子が許嫁として存在する。
想い合っていても、正太郎とお綾は結ばれることがない。
昔、正太郎に親切にされたことがある赤い谷の忌むべき人々の中にいるらんは、正太郎をずっと想い続けている。
村を救う役割で村に呼ばれたのに、用済みになると追い払われ、また危機が来ると呼び戻される赤い谷の人々。
「戦の時だけ必要な女」とまで言われたのに、正太郎に力を貸すらん。
その一途ならんを見守るイタチ。
京に登る夢を持つ月影の希望を叶えようとしている大殿に雇われている兄、石影。
弟のように思ってきたイタチとらんが夫婦になるのを楽しみにしていたカブト。
それぞれの想いが交差し、すれ違い、悲劇を呼び寄せる。
短い物語なのに、内容がぎっしりと詰まっていて、読み終わると涙が出ます。

ラスト、正太郎は本当に「赤い花の毒」にあたってしまったのですね・・・。

悪いのは誰かと言えば、大殿であり、村人達の総意を翻せなかった正太郎であり、自分たちの利しか考えなかった村長親子であり、赤谷の人々を忌み嫌った村人達であり、らんたちの味方になれなかったお綾でしょう。
本を正せば、予言を言ったおばばが元凶ですけれど。
つまり、全員がそれぞれ少しだけ間違った方向に進んだ結果、大きな悲劇が生まれたのです。
現実にもありそうですよね。

これは舞台劇だそうですので、この物語であれば、とても観てみたいと思いました。
DVDは出ていないのですよね、無念。




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リミット/五十嵐貴久著

評価:
五十嵐 貴久
祥伝社
¥ 1,680
(2010-03-11)

深夜ラジオ番組に自殺予告メールが届く。
番組は5周年記念の日で、トップお笑い芸人の奥田はカリスマパーソナリティーと言われている人物。
毒舌で人の言うことを聞かない奥田に、過去自分の息子が自殺した傷を抱えるディレクターの安岡は、思いとどまるようメッセージを出して欲しいと依頼するが、拒否される。
自殺予告は本当か、狂言か。
パーソナリティはどうするのか。
パーソナリティーとディレクターと、警察と、ラジオ局。
それぞれの考えが入り乱れ、深夜番組は進行していくが・・・。


番組が始まるまでのやり取りのテンポが悪い。
そこまでで約半分。
「リカ」の時も思いましたが、中盤以降テンポよく進むだけに、前半のもたつきが惜しい。
放送開始以降も、カリスマと言われる割には大したことを言わず、同じ発言の繰り返し。
ここにももう少し展開が欲しかった。
安岡を中心に事態が動くのであれば、奥田をこれ程持ち上げる必要性は薄い気がします。

奥田の取った行動で納得したのは、後半乱入だけ。
ならば分散させずに、もっと安岡を中心に密度を高めた方が物語が一貫したように思いました。
ラストも少し拍子抜けでしたね。

他の方のレビューを見るとダウンタウンの松本人志さんをイメージしている方が多い様ですが、私は何故かブラックマヨネーズの吉田敬さんを途中からイメージして読んでしまいました。

トータル的にはまぁまぁ面白かったです。
無駄な箇所を省き、密度を高めるともっと良作になったと思います。



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リカ/五十嵐貴久著

評価:
五十嵐 貴久
幻冬舎
¥ 1,575
(2002-01)

中年サラリーマンの主人公は、後輩に勧められた出会い系に填り過ごすうち、1人の女性とメールを交換するようになる。
彼女の名前はリカ。
初めは良かったものの、段々と彼女は粘着するようになり、ストーカー紛いの行為に及ぶようになる。
妻子ある主人公は彼女を遠ざけようとするが、彼女にどんどんと追い詰められて・・・。


第2回ホラーサスペンス大賞受賞作。
んー・・・。
出会い系ってこんな風に始めるものなのでしょうか。
どうも導入部でもたついているせいか、感情移入がしにくい作品です。
そのため、中盤以降リカが粘着を始める部分からのじわじわ来るべき怖さが薄い。
そもそも導入部だけで半分費やすのは展開的にも遅いです。
もう少しスピード感が欲しかった。
中盤からテンポ良く進むので、やや残念な作品です。

また、題材的にも割と良くある粘着ストーカー。
プラス「危険な情事」みたいな感じ。
題材が生かし切れてないのも、テンポと書き込みの浅さかなと思いました。

例えば。
リカの過去体験を少し匂わす様なモノローグやエピソードを挟むとかすると、どうして彼女がそうなったのかが分かりますし、納得も出来る。
どうしてタクシーに追いつけるのか、何故死なないのかの説明も欲しい。
もっと主人公の平和な家庭の描写があれば、対比も濃くなる。
無駄な出会い系の説明を省いて、違う部分のストーリーが欲しかったですね。

そもそも対峙する時にロープで縛るくらい主人公が気を利かせていればと思うのは私だけでしょうか?
人を惨殺した疑いのある人物を、気絶しているからと言って普通に助手席に乗せるなんて・・・ないわー(笑)

文庫版ではエピローグがあるそうですので、そちらを読んだ方がいいかも知れませんね。
私も見かけたら読んでみようと思います。











JUGEMテーマ:読書



学生時代、学ばなかった君へ/鷲田小弥太著

学校で学び、社会で学び、日常で学ぶ。
学ぶ意味や意義とは何かをテーマに綴られた一冊。
97年刊「学ぶことの法則」の改題増補板。

うーん。
学ばなかった人が、これからどうしたら学んでいけるかと言ったことに言及している本かと思い読んでみましたが、見当外れでした。
これは原題を「学ぶことの法則」を、そのま生かした方が正解の著書です。

本書の3/4は、著者が、どんな時代に、どのような師について、どのような環境で、どう学んできたかの記述に割かれています。
学び方を知りたい人には、あまりお勧め出来ません。

他のレビューを見ると高評価のようで、Amazonでも定価をはるかに上回る価格が付いていますが、学びたいのに学び方がよく分からなくて困っている人は、別の本を読んだ方がいいと思います。

むしろ著者が好きで、過去どのような学び方をして今に至ったかのディスコグラフィを知りたい方への本だと感じました。

言及対象がコロコロと変わっていくのも分かりにくい要素です。
大学卒業後の人間に対して語っているのかと思えば、「学生時代、学ばなかった君へ」と言うタイトルにもかかわらず高校生への言及に転化したり、社会人や定年後の人について語り始めたり支離滅裂です。
対象となる年齢を設定していないのかもしれません。

あと、発行した時代のせいかもしれませんし、著者の年齢にもよるのかもしれませんが、気になる書き方が少々あるのが不満でした。
大学へ行くのが当然のような書き方や、経済的理由で進学出来ない人はいないような言い回し、また受験に失敗すると一生傷を負ってダメになるような記述は不快です。









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歌舞伎町セブン/誉田哲也著

評価:
誉田 哲也
中央公論新社
¥ 1,680
(2010-11)

 ある冬の日、町内会長が死体で発見された。
死因は心不全。
なんら変哲のない死を巡って、バーのマスター、フリーライター、酒屋の娘、ヤクザの組長、交番勤務に配属された警官・・・それぞれの人生が交錯していく・・・。
それぞれの歌舞伎町を巡って交錯していく、生き方、これまでの人生、そして過去。
都市伝説と言われる殺し屋の歌舞伎町セブン。
彼らは一体何者だったのか・・・?


うーん・・・。
半ばくらいまでは、それ程の展開を見せず、どちらかというとゆっくりと流れていきますが、後半に入ると突然ストーリー展開がスピードアップします。
そのゆったりとした前半にもっとそれぞれの思いの深いところを突いていたら、後半が生きてきたのかなと思います。

文章は読みやすく、そつがない。
複線であろう部分が目立ってしまったので、最後の展開が読めて残念。
全体的には面白かったです。

個人的な意見とすれば、やはりどんな理由があろうとも殺人は殺人なので、殺して解決するのはいかがかなと思いますが。
無念を晴らす必殺仕事人と言えば聞こえはいいけれど、現代は司法社会なので、作中でも少し指摘がありますが殺人解決は良くないなと思いました。

登場人物が多く、視点が移るので、それぞれの思惑や感情の深い部分が掘り下げられなかったのが残念です。
せめて実質的な主人公の陣内とヒロインの杏奈の機微はもう少し掘り下げて欲しかったかな。
あと少々突っ込みたくなる点と、微妙な複線の回収漏れが気になります。
続編予定があるのでしょうか?
あるとしたら、次は人物が出そろっているので、いい展開になりそうです。




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